出会いと別れの季節に一生モノの本を贈ろう。京都の編集チームの人生を変えた「ずっと手元に置いておきたい」名著 6選

「ああ、もう生きていたくない」

数年前のある時期、私はこんな暗いことばかり考えていました。
今となっては大げさだなと思うのですが、大失恋をしたのです。

死にたいほど苦しい大失恋をしたのは、社会人1年目のとき。
私は新卒で知り合いが誰ひとりいない土地に就職し、その当時付き合っていた恋人と遠距離恋愛になりました。

そして、その恋人はいつの間にか他の女性と付き合っていたのです。

言葉にするとカンタンだし、世間ではよくある話かもしれません。
でも、知らない土地での初めての一人暮らしに不安や孤独を感じていた私にとって、その「事件」は溜まりに溜まっていた負の感情をどばっとあふれさせる引き金になりました。

相手への怒りや執着で気が狂いそうになり、ご飯もろくに喉を通らない。
このままでは本当にダメになるかも・・・。
そう思っていたときに、あるものに出会うことで、自分を肯定的に見られるようになりました。

それは一冊の本でした。

私は京都のあるWeb制作会社で編集・ライターをしているカミムラナナといいます。

私は本が好きです。
好きになったきっかけは、一冊の本に人生を救われてから。

「本に人生を救われるなんて大げさな」と思われる方がおられるかもしれませんが、私は一冊の本に本当に救われました。
そして、その経験が私にライターの道を歩ませてくれました。

以前、この話を編集部メンバーにしたところ、「私も本に救われた」という声が次々と。

そこで今回、私が編集部のメンバーに話を聞く形で、各メンバーから「自分の人生に影響を与えた本」を1冊ずつ紹介してもらうことにしました。

この記事をお読みの方の中には、人生がうまくいかなくて悩んでいたり、変化のきっかけを求めている方もおられると思います。
そんな方々にとって、この記事で紹介する本がお役に立てるとうれしいです。

今回紹介してもらった本の中には、私が知らなかった本もたくさんありました。
この年末年始を使って、紹介してもらった本に触れ、人生の視点を磨いていきたいと思います。

京都の編集チームの人生を変えた「ずっと手元に置いておきたい」名著 6選

それではさっそく、編集チームの各メンバーの人生を変えた「ずっと手元に置いておきたい」本を紹介していきます。

1.デッドエンドの思い出(よしもとばなな)
絶望の中にも必ず幸せは見つかる

トップバッターは私、カミムラです。
私はこの本に出会い、どんなにつらい状況の中でも優しい光が灯るということを知りました。

『素敵なギフト』編集部カミムラナナの人生を変えた1冊
デッドエンドの思い出
著者:
よしもとばなな
出版社:
文藝春秋
価格:
704 円(税込)
(2019年12月18日時点のAmazonの価格)

小説家・よしもとばななさん(現在は吉本ばななの名前で活動中)の、切なくも心温まる5つのラブストーリー集。

表題作の『デッドエンドの思い出』は、作者自身が「最高傑作」と語る短編。
そして、読者である私自身にとっても、人生で一番つらい時期を乗り越えさせてくれた最高傑作となりました。

婚約者に裏切られてしまったお人よしな「私」が、知り合いの誰もいない場所で日常を送り、心を回復させていくお話。
「私」が転がり込んだ「袋小路」という飲食店の雇われ店長、西山君との何気ないやりとりや、ぽつりとつぶやくような「私」の心の声に、「絶望的だと思える状況の中にも幸せはある」という「希望」が散りばめられています。

その「希望」は、たとえば「秋の空の透明さ」や「西山君とケーキを食べること」など、普段忙しくしているときには通り過ぎてしまう些細なことばかりかもしれません。

でも、なんてことのないように見える希望のかけらが、どうしようもなく苦しいときの自分をしっかりと支えてくれるのだということを、この本は教えてくれます。
それに、深い悲しみから癒えるためには、ひとりだけの時間が絶対に必要だということも。

私がこの本を初めて読んだのは、心から信頼し、愛していた人に裏切られた冬でした。
空がどこまでも高く、冷たい風が頬を刺す日、海辺のバス停でバスを待ちながら。
孤独で心が引きちぎれそうになりながらも、冬の凛とした空気を美しく感じられたのは、この本のおかげだと思います。
そして、孤独のときに感じたあの冬の美しさは、今でも私をことあるごとに励ましてくれています。

もし、今、ひとりきりで深い悲しみや怒りに暮れていたら、ぜひ『デッドエンドの思い出』を読んでみてください。

真っ暗闇の絶望の中にも必ず、優しい光が灯る。
そう実感できるはずです。

2.「ありがとう」がエンドレス(田口ランディ)
仕事に前向きに取り組むきっかけをくれた

続いてご紹介するのは、編集部のディレクターKさん推薦の一冊です。
彼がこの本に出会ったのは、前職で目標達成ができていなかった時期。
仕事に前向きに取り組むきっかけを、この本からもらえたそうです。

『素敵なギフト』編集部ディレクターK氏の人生を変えた1冊
「ありがとう」がエンドレス
著者:
田口ランディ
出版社:
晶文社
価格:
1,320 円(税込)
(2019年12月18日時点のAmazonの価格)

この本は、小説家・田口ランディさんがTwitterで投稿されていた言葉を一冊にまとめたもの。
大学進学と同時に東京で一人暮らしをはじめる娘さんに向けて、ランディさんが言葉を綴っていくという内容です。

4年前、僕は行きつけのカレー屋さんの本棚で、この本に出会いました。

当時は別の会社でWebディレクターとして働いていたのですが、毎月の目標数字が達成できず、チームのモチベーションもどんどん下がる日々。

前向きな気持ちに切り替えられずにいたころ、何気なくこの本を手に取ったのです。
ページを開くと、ランディさんの人生経験による深い言葉が自分に向かって飛び込んでくるようでした。
そして、ふっと肩の力が抜けて視界が明るくなりました。

目標数字には達していなかったけれど、サイトのPV数は毎月少しずつ伸びている。
自分たちの仕事の成果は、ゆっくりではあるものの確実に良い方向に進んでいたことに気づかされました。

「今日も、自分のやりたい仕事ができている」
「今日も、チームメンバーと一緒にチャレンジできている」

当たり前のことを一生懸命にすることで、感謝すべきことがどんどん発見できる。
結果だけにとらわれると、どんどんフラストレーションが溜まってきてしまうけれど、感謝できるものはいつもそばにあること。
そして、その「ありがとう」の気持ちをもっていたら、また「ありがとう」が自分に返ってくる。

そんなことを、この本は教えてくれました。

カレー屋で出会った翌日、自分用に買いに走りました。
ちょっと行き詰まった気持ちのときに、さっと読めるページ量。
小説ではないので、どのページから読みはじめても大丈夫です。

読むたび、心に響いたページの角を付箋がわりに折っています。
また違うタイミングで読み返すと、前回は折らなかったページを折っているから不思議です。

3.椿山課長の七日間(浅田次郎)
不器用で澄んだ生き方に、勇気をもらえる

3冊目は、浅田次郎の大ファンで、彼の著作はすべて読んでいるというエンジニアHさんのオススメ本です。
「くれぐれも電車では読まないこと」というアドバイスとともに、コメントしてくれました。

『素敵なギフト』エンジニアH氏の人生を変えた1冊
椿山課長の七日間
著者:
浅田次郎
出版社:
朝日新聞出版
価格:
660 円(税込)
(2019年12月18日時点のAmazonの価格)

この『椿山課長の七日間』を読み終えると、登場人物たちに「よくやった!グッジョブ!」と言いたくなる達成感がある。
そして、彼らの不器用で澄んだ生き方が、私にすっきりと前向きになれる力をくれる。

これが、私がたびたびこの小説を読み返す理由です。

この本を読む間、私は少なくとも5回は涙をこらえて鼻をすすり、6回はクスっとし、ラストはこらえきれず大号泣。(電車では読まないで!)

もし、あなたが今日死んだとしたら、心配なこと、やり残したことはありますか?

この本は、28年間デパートで働き詰めの主人公が、買ったばかりの家のローン・愛する妻・小学生の息子・認知症の父親を残して、46歳にして突然死してしまい、自分が死んだ後の世界に7日間だけ生き返るというお話。
周りの人に正体がバレないように、現世とは似ても似つかない美女として生き返ってみると、「知らないままのほうが成仏できたのに」というショックな事実が次々発覚します。

主人公の他にも、人違いで殺されたヤクザもの、小学生も同時に生き返り、それぞれの家族や周りの人々を少しずつ巻き込みながら、大切な人との絆を振り返っていく、群像劇。
数人の人生が絡み合っているのに、絡み方があまりにも自然で、すいすい読めてしまいます。

目の奥、胸の奥がじわりと熱くなるストーリーだけなく、簡単な言葉でものすごい情報量を含んだ比喩や、ハッとする提言が随所にあるのも魅力です。

「日米安保条約のようなカンケイ」
「失恋したからもう傷つきたくない、そんな弱腰じゃ恋愛する資格なんかない」

ちなみにこの本、舞台化や映画化もされています。

4.自分の答えのつくりかた―INDEPENDENT MIND(渡辺健介)
主体的で豊かな人生を歩むヒントであふれている

お次は、デザイナーのFさんオススメの一冊。
タイムマシーンに乗って過去の自分に手渡したい、今の子どもたちにもぜひ読んでほしいとコメントしてくれました。

『素敵なギフト』デザイナーF氏の人生を変えた1冊
自分の答えのつくりかた―INDEPENDENT MIND
著者:
渡辺健介
出版社:
ダイヤモンド社
価格:
1,759 円(税込)
(2019年12月18日時点のAmazonの価格)

もしタイムマシーンに乗って中学生の自分に会いに行けるなら、この本を手渡したい・・・。
それほど「もっと早くこの本と出会っていたかった!」と思った一冊です。

この本は、人生の羅針盤となるような、より主体的で豊かな人生を歩むヒントであふれています。

著者の渡辺健介さんは世界最高峰のコンサルティング会社出身で、前作の『世界一やさしい問題解決の授業―自分で考え、行動する力が身につく』は、世界25カ国で読まれる47万部のベストセラー。
まさに問題解決のプロフェッショナルです。

そんな世界レベルの問題解決法を、海を舞台に赤い魚の男の子「ピンキー」が成長していく物語を読みながら学べます。
中高生も楽しめるストーリーで、本を読むのが苦手な大人にもオススメです。

この本のすごいところは、ただ物事のメリット・デメリットを並べて「失敗しなさそうな答えを出す方法」で終わっていないことです。
思考の土台となる価値観の築き方や理想と現実のギャップを乗り越える方法、他者と自身の違いを知って議論する方法など、小手先ではない「自分自身と他者としっかり向き合いながら自分の答えを作りあげていく方法」が書かれています。
物語の中でピンキーに気づきを与えるクラゲやカメたちの言葉には、大人が読んでもハッとさせられます。

平凡な男の子だったピンキーが、異なる文化や意見と出会いながらも問題に立ち向かい、少しずつ「自分の答え」を見つけて成長していく姿には、きっと子どもも大人も胸を打たれ、どんな状況からでも一歩踏み出す勇気をもらえるはず。

ぜひ一度手に取っていただき、クラゲやカメになった気持ちで、中高生のお知り合いにこの本を贈ってみてはいかがでしょうか。

5.孤独のチカラ(齋藤孝)
一人で己と向き合う時間の不安・焦燥を肯定する勇気をくれた

『素敵なギフト』の副編集長、Hさんがオススメしてくれたのは、孤独であることを肯定してくれる本。
何かを成し遂げようとすれば「単独者」となる時間が必要という言葉に、勇気をもらったと言います。

『素敵なギフト』副編集長H氏の人生を変えた1冊
孤独のチカラ
著者:
齋藤孝
出版社:
新潮社
価格:
506 円(税込)
(2019年12月18日時点のAmazonの価格)

10代後半から20代前半の思春期~青年期、いわゆる飲み会や多人数での食事会などがいつも苦痛だった。

いや、飲み会や多人数で集まること自体は楽しかった。
今でこそ、それ自体が苦痛だったのではなく、楽しさのあとに襲ってくる「虚しさ」、言いようのない不安・焦燥に耐えられなかったのだと分かる。

自覚していたのは、「何かに熱中している人」への羨望(あこがれ)。
自分には明確にやりたいことがあるわけでもなく、何者でもない、そんな焦りがあった。 (まさに、いわゆるモラトリアム期間特有の、一人前になる前の若者の多くが経験しているであろう、あの気持ちだ)

だからこそ、知識をつけたり作品を作ったり、スキルを磨く時間に没頭したかった。
とはいえ、本当にそれでこの不安や焦燥は解決されるのか確信はない。

そんな中、たまたま寄った本屋で、タイトルに惹きつけられて思わず手に取ったのが「孤独のチカラ」。
中身も見ずに購入したのは、きっと無意識に「今の自分を肯定してほしい」という気持ちが強かったからだろう。

─── 孤独に耐えるには教養が必要。

「孤独のチカラ」は自分が悶々としていたことを明確に言葉で表し、正体不明の不安や焦燥の姿を少しクリアにしてくれた。
そして、「何かを成し遂げるには『単独者』となって自分を鍛えなければならない」「人間的成長を望むのであれば、精神を心地良い地点から一度断絶させる必要がある」といった内容に勇気づけられた。

また、書籍の中では、さまざまな「孤独に耐える教養」となる文学作品が紹介されており、読み返すたびにそれら先人の著作を読みたくなり、新しい発見があるのも魅力だ。

SNSが発展し、知人だけでなく他人の動向・成功が簡単に目に入ってしまい、孤独な時間を非常につくりにくいと感じる現代。
そんな今の時代の若者にこそ、手にとってみてほしい。

6.私とは何か――「個人」から「分人」へ(平野啓一郎)
大切な人との悲しい別れを「分人」が解きほぐしてくれる

最後の一冊を紹介するのは、『素敵なギフト』編集長のMさん。
Mさんはこの本によって、最愛の父との別れの悲しみが解きほぐされたそうです。

『素敵なギフト』編集長M氏の人生を変えた1冊
私とは何か――「個人」から「分人」へ
著者:
平野啓一郎
出版社:
講談社
価格:
814 円(税込)
(2019年12月18日時点のAmazonの価格)

「お前はすごいなあ。オトンの自慢の息子や」
その言葉は、私が実家に帰るたび、父が私にかけてくれていた言葉だった。

私が起業したことを誰よりも応援してくれていた父。
しかし、父はもういない。

私は3年前に父を亡くした。
最愛の父だった。

自分の親が亡くなることが、あんなにも悲しくツライことだとは、当時の自分は知る由もなかった。
その悲しみの深さは、今まで自分が感じてきた悲しみとは明らかに違うものだった。
押し潰されそうな悲しみの中、私は一冊の本の存在を思い出す。

「私とは何か――『個人』から『分人』へ」

この本こそ、私の心に引っかかっていた悲しみを、優しく解きほぐしてくれた一冊だった。

愛する人を亡くしたとき、人はなぜ悲しみに包まれるのか。
その理由は、愛する人との「分人」をもう生きられないことを悟るからである。

人は誰かと関わりをもつとき、その相手に合わせた「分人」をつくり出す。
関わった人の数だけ、分人は存在する。
そして、それらの分人は、そのどれもが紛れもない本当の自分。

そう、分人は他人との関係性によってつくられる、相手専用の自分なのである。

私が父を亡くしたときに感じた悲しみ。
それは、父を亡くしたと同時に、父との関係性の中で育ってきた自分の「分人」が亡くなろうとしていた悲しみでもあった。
そして、その悲しみの量こそ、父が与えてくれた愛情の量であり、自分が自分の「分人」に対して注いでいた愛情の量だったのである。

人は誰かを愛したとき、相手を愛するのと同時に、その相手との間に生まれた自分の「分人」を愛しているのだ。

人は生きていく上で、たくさんの人と出会う。
その出会いの中で、さまざまな「分人」が生まれる。

人生とは、たくさんの人との出会いの中で、どんな「分人」を生み出せるかという壮大な旅だ。
その旅の中で、もし、自分が心から愛せる自分の「分人」と出会えたとき、その出会いはきっと素敵なものなのだと思う。

一生に一度しかない人生の中で、どれだけの「分人」と出会えるか。
人生は他人との出会いの旅だけでなく、自分との出会いの旅でもあるのだ。

そして、この本はこうも語っている。

最愛の人との間に生まれた分人はすぐには消えないと。
故人の想いを受けて育った分人は、相手の存在をこの世に投影する半身にもなりえると。

相手との関係性が濃ければ濃いほど、自分の中の分人はすぐには消えない。
だからこそ、ゆっくりと時間をかけて、相手を失った悲しみと向き合うことができる。

亡き父の想いを継いだ分人は、きっと今も自分の中に生き続けている。
ただ、その分人は月日とともにだんだんと小さくなるかもしれない。

だからこそ、あらためて、父、そして、父とともに育った自分の分人への感謝の言葉を紡ぎたいと思う。

今まで、本当にありがとう、と。

もし、大切な人との悲しい別れが訪れたとき、この一冊を手に取ってほしい。
この本で出会える言葉たちはきっと、あなたの悲しみを優しく解きほぐしてくれるはずだから。

まとめ

今回は、カミムラナナが、『素敵なギフト』編集部のメンバーにインタビューをし、各人の人生を変えた「ずっと手元に置いておきたい」名著を6冊紹介しました。

イライラしたり、落ち込んでいるとき、「味方が誰もいない」と孤独を感じることがあるかもしれません。
でも、そんなときに本は、孤独に優しく寄り添ってくれます。
そして、ときに一緒に笑い、泣き、ときにとても大切なことを教えてくれます。

あなたや、あなたの大切な人の「心の友」となるような本に出会えますように。

この記事を書いた人

カミムラ ナナ

カミムラ ナナ

「素敵なギフト」編集部の勤続2年目女子ライター。日々、大好きな取材や編集に明け暮れていて、とても幸せです。自分が出会った素敵なギフトを、自分のか細い語彙力で紹介していきます。凛とした言葉を奏でられる人に憧れる。